ロックウェルレイザーは2014年にKickstarterでのクラウドファンディングキャンペーンからスタートしました。しかしそこには大きな苦難が満ちていました。
この経験を振り返り、ロックウェルレイザー共同創業者であるガレス・エヴァラード(Gareth Everard)がスタートアップ向けの情報発信サイトに寄稿した記事(日本語)をご紹介します。元記事➡How my Kickstarter blew up my life
ロックウェルレイザーが皆様、お客様をどのように思い、ビジネスに取り組んでいるかを知っていただく一端となりましたら嬉しいです。
該当の製品はこちらからご覧いただけます ➡Rockwell 6S
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2014年10月、私は初めてのクラウドファンディングキャンペーンで約150,000ドルを集めました。しかし3ヶ月後、大学最後の年、21歳の時、Kickstarterのことを知らなければよかったと後悔しておりました。私はキャンペーンを支援してくれた2,500人以上の人々に、不良品を出荷するというクラウドファンディングにおける大罪を犯してしまったのです。
現在は2016年3月、バッカーたちは再び大きな支援者となってくれています。私はビジネスを築き成長し、なんとか学校を卒業することができました。クラウドファンディングの試練から、大きく成長した起業家として、そして(私が信じるところでは)より良い人間として一皮むけることができました。以下は私の物語です。これが、クラウドファンディングや起業を志す人々にとっての教訓、そして他のすべての人々にとってのエンターテインメントとなることを願っています。
私は火曜の夜、12,000ドルの目標で製品のキャンペーンを立ち上げました。翌朝目を覚ますと、私の知らない世界中の何百人もの人々から18,000ドルの誓約(プレッジ)が寄せられていました。励ましのコメントが私の受信箱に溢れていました。私はすぐにクラウドファンディングに夢中になりました。
私はマーケティングについて何も知りませんでしたが、共同創業者と私は数ヶ月間の作業を経て、有用で革新的な製品を作り、今では明らかに酷いと分かるビデオを作成し、キャンペーンのためのまずまずの情報ページをまとめました。ニッチなブログの投稿、地元のTV出演、そして純粋な運により、キャンペーンは約148,000ドルで1ヶ月後に終了しました。
しかし、私たちは数千の製品を出荷する準備が全くできていませんでした。これらはKickstarter用に自社ブランド化された既存の製品ではありません。各コンポーネントは、この種の製品に対してこれまでにない方法でゼロから製造しなければならなかったのです。一方で、Kickstarterやキャンペーン後の予約注文のおかげで、70か国以上、2,500人以上の人々が待ち望んでいました。私たちは製造に関する経験がまったくありませんでしたが、待っている方々のためにも新しい製造・発送計画が必要でした。
私たちはアメリカのインベストメント鋳造(訳注:鋳造方法、工業プロセスの一種)メーカーにアプローチしました。キャンペーン前、彼らは私たちの製品を作るために驚くほどの価格の見積もりを提供してくれました。彼らの製造したプロトタイプは、大量生産の品質を代表するものとして、素晴らしく見えました。私たちは話が前へと進んでいることにとても興奮しており、何千ものユニット生産を注文しました。生産中、製造施設をただ一度も訪れることなく、私たちは完全に信頼していました。まるで騙されやすい子供のように。
完成したユニットは、近くのサードパーティーロジスティクス(3PL 訳注:発送を担当するビジネスパートナー)施設に直接送られ、私たちのバッカーに発送されました。数週間前、私たちは2日間学校を休んで3PLに製品の組み立てや梱包の方法を教えました。そして、私たちは学校に戻り、自分たちの優れたアウトソーシングと委任するというスキルに自己満足していました。私たちは試験を受け、休暇のために家に帰りました。
当初、私たちは2014年12月に出荷するつもりでしたが、小さな製造遅延と、3PLが休日中にスタッフを確保していなかったため(それを想像できますか?)、北アメリカのバッカーの大半は2015年1月に製品を受け取ることになりました。これにより、数百人の人々のクリスマスを台無しにしてしまいました。この時点で、私たちは自分たちの過ちに気づきました。生産中に工場を訪れず、そして自分たちで製品を組み立て、品質をコントロールし、発送せず、私たちは生産したすべての製品をしっかりと見ることがありませんでした。私たちはすべてが大丈夫だろうと思い込んでいました。なので、これから起きようとしているKickstarterの怒りを全て受け入れるしかありませんし、そうすべきでした。
私たちが製造施設を訪問しなかったこと、製品の組み立てや品質管理を自分たちで行わなかったこと、そして最終製品をじっくりと確認しなかったことは大きなミスでした。私たちが単にすべてが順調に進むだろうと仮定していたので、その後訪れるKickstarterの怒りは当然の報いでした。
製品が出荷され、バッカーたちがそれを手に取ったとき、不具合や欠陥を多くの人々から指摘されました。私たちはこのプロジェクトを成功させるためにかけた時間、労力、そして情熱を考えると、その反応に完全に打ちのめされてしまいました。しかし、これは私たちの失敗から学ぶ重要な機会でもありました。
この経験を通じて、私たちはビジネスと製品開発の多くの側面について学びました。また、お客様との信頼を築くための価値や、クラウドファンディングキャンペーンを成功させるための責任についても深く理解しました。最終的に、この試練は私たちをより強くし、また製品開発についての知識を豊かにしました。
製品に対するフィードバックが私たちのKickstarterコメントページや、私たちの製品のカテゴリに関連するsubredditsやフォーラムで瞬く間に広がり始め、そのほとんどが肯定的なものではありませんでした。コメントの中には憎しみに近いものもありました。品質の問題が単発の事例ではなく、一貫した問題であることが明らかになると、私はアパートの窓からソフィア・コッポラの映画のキャラクターのように気怠く外を見つめるのに6時間を費やしたと思います。悔しさも感じていました。私たちは何が間違っていたのかをすぐに確認するために、未発送の製品をすべて3PLから両親の家に積み戻しました。
日々、「あなたは悪い人間である」とか「詐欺を働いている」という類のメールやコメントを数十通受け取り、そのすべてのメールに「申し訳ありません。現在、改善対応しております。本当に申し訳ございません。」としか返信できない経験は、筆舌に尽くしがたいものです。製品の品質や遅延に怒っているバッカーからのフィードバックを受けて、キャンペーンを途中で放棄するKickstarterプロジェクトのクリエイターがいると聞きました。少なくとも数日間、私はそのようなクリエイターの気持ちが分かってしまいました。
多くのお客様からの数百の怒りのメールやコメントに応答する際の、私の新たな「イーヨー」(訳注:プーさんに出てくる、のんびり口調とネガティブ思考のあのイーヨー)のような様子を見かねて、友人がRyan Holidayの「The Obstacle is the Way」という本を勧めてくれました。その本から私が得た主な教訓は、課題に直面したとき、それに麻痺してとどまってしまうのか、それを動機づけとして学び、課題を乗り越える方法を見つけるかは自分次第だということでした。
この教訓は私にとって最高のタイミングで得られました。学校の成績は良いとは言えず、学部の論文は大幅に遅れ、卒業を控えた友人たちのように普通の仕事の面接も受けていません。私は自分のプロジェクトに全てをかけていたのです。自己憐憫に浸るか、ミスを認めて修正するか、その選択をする時だと気づきました。そのとき私は、すべてのバッカーに納得してもらうことを自分自身に約束しました。ただそれが1年以上もかかること、そして私の人生で最も困難な年となることを、私はまだ知らなかったのです。
製品がトロントに戻ってきたとき、私は数週間、授業がない日や週末に大学から3時間のバス旅をして、数千個の製品すべてをチェックし詳細な品質管理を行いました。そしてバッカーたちが結論付けたのと同じ結論に私も至りました。製品はひどいものでした。製造業者が最初に送ってくれたサンプルは、CNCという精密ツールを使用して機械加工されていたことが後にわかりました。これにより、サンプルの品質は非常に高いものでしたが、全体の製造ランで得られる結果を代表するものではありませんでした。彼らはこれを知っていましたし、「私たちがKickstarterで大量の資金を調達しており、経験がなく、もっとよい方法を知らない」ということも知っていました。私たちは彼らの仕事をチェックすることもせず、これは明らかに私たちの過ちでした。
今までにない製品を製造するために、どれだけの努力が必要かを真摯に受け入れていなかった私は、インベストメント鋳造メーカーがし損じた製品部分を調整できる地元の機械工を見つけました。この方法で問題が解決し、みんなが再び満足するだろうと楽観的に考え、怒りのメールが止まるだろうと思っていました。その機械工は友好的で、経験豊富なエンジニアでした。私が彼の店にいる間にいくつかの部品を研削して、元の設計モデルで求められていた寸法を的確に実現したのです。この解決策にはとても自信があったので、彼の店から製品を受け取り次第私は喜んで2,500人のバッカーに製品を組み立てて発送しました。そして1月に送り出した問題のあった製品数百個に対しても無料で交換分を送りました。
それが第二の失敗でした。地元の機械工は熟練した職人でしたが、何千ものカミソリ部品を研削する作業は、私が推測するに、手が足のような従業員に委ねられていたようでした。私は二度目の「プロフェッショナル」を盲目的に信じてしまい、今回は本当に大きな代償を払いました。発送されるすべてのユニットを確認することを怠ったため、重要だが目立たない部分の寸法が研削により大きく変わっていたことに気づかなかったのです。前回受け取ったメールやコメントが熱い「火」というなら、今回受け取るメールはさらに怒りに満ちている「炎」でした。
それは2015年3月のことでした。私は何千もの製品を発送しましたが、ほとんどが不評で、さらに何千もの製品が私の両親の地下室に置かれていき、どんどんスクラップメタルのように見えてきました。私はほぼすべてのお客様からの信頼を失っていました。未完成の論文とイライラした指導教官が私の心の中をさらに複雑にしました。
私はどん底に突き落とされました。製造に関するあらゆる間違いを犯しましたが、誰も私を助けてくれることはありませんでした。私が知っていたことは、数ヶ月前に自分自身に約束をしたこと - 何があっても、私はバッカー、お客様に正しいことをすると。その約束を破ることはできませんでした。私のミスを修正することが私の唯一の焦点となりました。
2015年3月、すべてのバッカーに対して、これまでの問題を解決し、完璧な品質の交換品を無料で送ることを約束しました。この発表は、支援してくれたバッカーからの励ましの言葉(ありがとう、皆さん!)と、私を見限った大勢の人々からの無関心の反応を受け取りました。何千ものカミソリを無料で発送する方法を模索中でしたが、支援してくれたバッカーに満足してもらえるよう私はそれを約束することにしました。そして、それを実現する方法を何が何でも見つけなければなりませんでした。
私は幸運にも、トロントの素晴らしいエンジニアチームと知り合うことができました。彼らは私にいくつかの重要な結論を迅速に導いてくれました。まず、インベストメント鋳造は精密な道具の製造技術として適切ではないということ。次に、より精密な製造方法を用いれば、いくつかの設計上の微調整によって、バッカーが不満に思っていた製品の側面を大幅に改善することができるということでした。
当初、私たちはステンレス鋼の部品を大量生産するのに、必要な初期投資が比較的少なくて済むインベストメント鋳造を選んでいました。より精密な金属射出形成(MIM)という選択肢もありましたが、初期投資が高額であったため、2014年当時は選択肢から外していました。しかし、Kickstarterで得た資金が残りわずかとなり、私の個人的な貯蓄をすべて投資することで、私たちはMIM製造に踏み切りました。
当初私たちは製品がアメリカ製であるとバッカーに約束していたので、アメリカで数少ないMIM施設の一つを探し出し、協力してくれるよう説得しました。(私たちが知る限りでは)この種の製品をMIMを使用して製造するのは世界で初めてであるという挑戦に魅かれたのかもしれません。何ヶ月もかけて金型を作り、設計を微調整し、許容差を調整し、品質を確かなものとするまで何度も製造し、私たちはついに素晴らしいものができたと実感しました。
2016年1月に、私たちはついに全てのバッカーに無料で交換品の発送を開始しました。初回で得た教訓を生かし、私は何千ものカミソリに含まれる数万もの部品をすべて個人的にチェックしていきました。さらに私たちは厳格な品質管理手順と基準を設け、管理を徹底しました。現在の製造パートナーは、私の厳しい基準に合わせて素晴らしい品質管理をしてくれています。
これはただの製品であり、Kickstarterキャンペーンで数千の人々に正しい行動をとることが、ビジネスの世界にとってそれほど重要でないことは知っていました。しかし、私自身にとっては満足してもらえる製品を届けることがすべてでした。極めて困難な壁が目の前にあったとしても、何千人ものバッカー・お客様に対して約束を守ることを何よりも優先すべきでした。そして何とか問題を解決することができました。
多くの苦難があったと思われるかもしれませんが、私は正しい方向に進めたと考えています。2015年9月に共同創業者が学校に戻ることになり、彼は当面の間、手伝うことができないと言いました。これにより、私はビジネスのあらゆる責任を背負うことを余儀なくされました。Kickstarterの後、より多くの予約注文を増やすためにコンテンツの作成やソーシャルメディアに注力する代わりに、私はもっと伝統的な小売関係に焦点を当てました。国際的なディストリビュータからの十分な量の注文を確保することができ、彼らから預かっているデポジットで、製造している間でもビジネスを継続することができました。Kickstarterの後も、直接お客様からの予約注文を受け続けましたが、もし私が予約販売だけに焦点を当てていたら、ビジネスは今も存続していなかったと思います。
バッカーたちに数千の無料の交換品を出荷した後、追加の予約注文、卸売注文、国際ディストリビューターからの注文への対応を開始しました。最大の課題は、製品の需要を満たすために生産を拡大することでした。ただ2016年のこの問題は、2015年の問題よりも遥かに良い状況です。
そんな中、どうにか私は2015年6月に大学を卒業し、ビジネスに専念するためにトロントに戻りました。現在、規模を拡大して、私自身ではもう手が回らない部分を処理するためにスタッフを雇うところにあります。結局のところ、Kickstarterでの私の経験は非常にポジティブなものだったので、次の製品をクラウドファンディングする際には再びKickstarterを利用する予定です。多くの教訓を学んだ今となっては、それが波乱万丈になるだろうけれど、同じくらいにより楽しいものにもなると予感しています。
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長文でしたがお読みいただき、誠にありがとうございます。
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